周産期専門医への道

『周産期医療に従事する医師の水準を高め、高度な医学知識と技能によって他の医師に適切な指示を与えることができる臨床能力を有する医師』

専門医は日本周産期・新生児学会が認定します。その種類と名称には周産期(母体・胎児)専門医(Perinatal Obstetrician)と周産期(新生児)専門医(Neonatologist)の2種類があります。 新生児専門医は平成19年度より認定を開始され、母体・胎児専門医は平成21年度に最初の認定が行われました。

琉球大学医学部附属病院周産母子センター

『周産期医療専門医育成プログラム』について

1.プログラムの理念・概要・特色

周産期医療を担う産科専門医・新生児専門医が不足し、女性が安心して出産できる環境が脅かされ、大きな社会問題となっています。この問題を解決するためには、長期的な視点に立った産科専門医・新生児専門医の人材育成が重要です。
私たちは、合併症を有するハイリスク母体の管理、出生前診断、胎児の生理に基づいた胎児モニタリングの理解、胎児から新生児へ連続した周生期の管理と集中治療、長期的な乳児管理を系統的に集中的に研修するプログラム設定しました。最終的には産科医療に重点を置く産婦人科医、新生児医療に重点を置く小児科医、産科医療/新生児医療の両方を行う総合周産期医の3種類の医師の育成を目標としています。
休業している女性医師等の再活性化も極めて重要と考えられ、本プログラムにおいて復帰支援プログラムの形成に取り組みます。女性医師の参画に関しては、出産、育児のために休業していた女性医師を対象に、勤務時間を週30時間以内としたパートタイム雇用の非常勤医師(医員)制度を平成20年度から開始し、日勤帯の業務、土日の日直業務を担当してもらい、男性医師の業務軽減に生かしています。そのため男性医師、女性医師双方から良好な感触を得ておりシステムの拡充が望まれています。

2.本プログラムを実施する必要性

周産期医療の発展は目覚ましいものがあり、合併症を有するハイリスク母体の管理、胎児期から新生児へ連続した管理が重要です。新生児についても呼吸器・循環器・神経学的発達など成人と変わらない集中管理が必要で、若手医師に対して集中的に周産期医療の理論と実践を修得させることが望まれます。そのために新生児科と産科が一体となった研修プログラムを構築することがとても重要です。
沖縄県の出生率(人口千対)は12.1で全国一の高さです(全国平均:8.7)。二つの総合周産期母子医療センターを中心に周産期医療施設の整備とネットワーク化が進み、新生児死亡率、周産期死亡率、乳児死亡率は改善しワーストワンを返上しました。しかし、未だに低出生体重児の出生率が全国一高く、若年者の出生や妊産婦死亡も全国平均より高く、さらに周産期医療の改善が必要です。琉球大学は沖縄県における唯一の医学部であり、医師の育成、特に離島僻地医療を担う医師の育成に努力し、実績を上げてきました。また、沖縄県周産期ネットワーク協議会の中心的な役割を果たすとともに、各施設へ新生児科医、産科専門医を派遣してきました。沖縄県の周産期医療の改善、充実のためには産婦人科医も新生児科医も未だ少なく、若手医師の育成が急務です。したがって本院に周産期医療に特化した周産期専門医の育成プログラムを立ち上げる意義は極めて大きいといえます。

3.プログラムの実施体制等

(1) プログラムの実施内容・実施体制

初期研修医に対する周産期専門医プログラム

琉球大学医学部附属病院初期研修プログラム(RyuMIC)では平成21年度は小児科特別コースを設定しています(小児科重点コース:図)が、平成22年度からは小児科コース(特別枠、2名)を設定します。平成23年度からは産婦人科コース(特別枠)、周産期コース(特別枠)も追加していく予定です。

小児科コース

  4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
一年次 内科 救急 小児科
二年次 産科 外科 地域 精神 小児科
後期研修医に対する周産期専門医プログラム

小児科医、産婦人科医を目指すものは初期研修終了後に産科とNICUにおいて各々6ヶ月間の臨床研修を重点的に行います。さらに臨床経験を積むために県立病院や国内の周産期センターにて6ヶ月から1年間研修を行います。総合周産期医は初期研修終了後3年間の間に産婦人科6か月及び小児科6か月の研修を行います。この間に産婦人科専門医または小児科専門医をとるために、必要な分野の経験を積みます。専門医取得に関してはこれまで大学から下記の施設に医師を受け入れていただいており、さらに研修協力病院を増やすことも考えております。

小児科研修協力施設:県立南部医療センター・こども医療センター、那覇市立病院、鹿児島市立病院、埼玉県立小児医療センター、長野県立こども病院産婦人科協力施設:県立中部病院、那覇市立病院、沖縄赤十字病院、新潟大学附属病院、聖隷浜松病院

研修スケジュール例

周産期関連婦人科医

  4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
三年次 産婦人科 周毋(NICU) 周毋(産科)
四年次 周毋(産科) 周毋(NICU) 産婦人科関連病院研修

周産期関連小児科医

  4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
三年次 小児科 周毋(産科) 周毋(NICU)
四年次 周毋(NICU) 周毋(産科) 小児科関連病院研修

総合周産期医

  4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
三年次 産婦人科 周毋(NICU)
四年次 周毋(産科) 小児科
五年次 周毋(NICU) 周毋(産科)

基本となる小児科学会、産科婦人科学会に早期に入会し、学術集会に参加し基礎的知識の吸収に努めるとともに、学会発表・論文を執筆できるようにします。
周産期医療関連のサブスペシャリティーとして、日本周産期・新生児医学会新生児専門医と母体・胎児専門医がある。そのどちらかの専門医資格が取れるように研修を積んでいただきます。また、実践的な産科救急および新生児蘇生法を習得してもらいます。

女性医師に対する勤務継続・復帰支援

産婦人科、小児科を希望する女性医師も増加しています。しかし、結婚、妊娠、出産、育児などのため超勤、夜勤、日当直をこなせず病棟医師をやめる例が非常に多いのです。そのため病棟現場に残る医師の負担が増大しています。よって、本プログラムでは女性医師の勤務形態を柔軟化し、勤務継続、復帰を支援する方策を実施し、常勤医の日勤業務及び日直業務の負担軽減をはかります。女性医師の復職の大きな障害になるのが子供の急な発熱などへの対応なので、病児保育所を含めた育児支援にも取り組みます。

復職研修の具体的なスケジュールは以下の通りです。

  • 1期 : 復職し職場環境に慣れる。指導医の出す指示に従って行動する。
  • 2期 : 主体性を持って日勤業務を行う。業務内容は指導医の指導をうける。
  • 3期 : 日直業務を担当する。業務開始時には指導医が治療方針や業務の確認を行う。
  • 4期 : 独立して日直業務を行う。指導医が電話対応しサポートする。

女性医師復職研修プログラム

一年目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
1期 2期 3期
二年目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
4期

復職プログラム終了後は希望がない限り日勤業務、日直業務のみとし、上記条件と理念を理解する病院と連携をとり、恒常的な勤務が行えるようにします。

(2) 到達目標

周産期医療における基礎的な知識と技量を身につける。母体の管理から胎児評価、新生児へ連動した管理が行えることを目標にする。

《産科、母体・胎児専門医の到達目標》

  • ハイリスク妊娠、合併症を有する妊婦の適切な管理ができる。
  • 産科救急のプライマリーケアができる
  • 帝王切開術、吸引分娩などの産科手術が行える
  • 胎児異常の系統的な評価、出生前診断ができる(基礎的胎児超音波検査が行える)
  • 胎児well-beingの評価が行える
  • 胎児心拍陣痛図の基本が理解でき、緊急時の対応ができる

《新生児専門医の到達目標》

  • 胎児の生理、新生児の生理の特徴を理解できる。
  • 胎児から新生児への連続した管理が行える。
  • 新生児蘇生、周生期の新生児処置ができる。
  • 新生児呼吸管理の基礎が理解できる。
  • 乳児期の発育、発達を理解し、病的乳児の管理指導が適切に行える。